2018/11/18

積ん読を減らそう:「影をなくした男」のこと








11/18:先日亡くなったばかりの友人の訳書も発注したり
柳生まち子さんの装幀画に一目惚れして江國香織さんの
本を買ってしまったのに、その前からある「積ん読」 
(読んでいない、積まれている本)を減らす月間にしよう
かと思いたち、実行にうつす。映画にもなった「インド
夜想曲」に、この「影をなくした男」の主人公の名前を
偽名として使うキャラクターが出てくるので、いつか 
読んでみたい、と思っていた一冊。         


インド夜想曲 [DVD]インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

「インド夜想曲」はアントニオ・タブッキ・原作。私は先に映画を観て、
その後に原作(須賀敦子さん・訳書)を読んだのですが、映画と原作に
設定が違う部分も多くもあり、両方に「影をなくした男」の主人公の
名前を偽名として使うキャラクターが出てくるのかは失念、映画には
出てくるのですが。                      



ネタバレになってしまうので多くは語りませんが、意外な
展開でした。表紙がヒントだったか!とも。積ん読の読み
残してあったもの、2晩で読了。眠る前に携帯端末の光を
浴びながらSNSを眺めるよりも充実感と眠気がやってくる
ことを知る。                    





翻訳を手がけた池内紀さんの後書きも良かった。私の初めての
絵本の仕事は木坂涼さん・作「かげはどこ」だったもので、 
影についての話が興味を引く。「私という他人」としての影。
"ある齢ごろ(としごろ)になってようやく影の意味合いに気がつく"
ということだとか。生きているからこそ、実体があるからこそ
の影、でもあると思う。                 



この本の翻訳者・池内紀さんというと新聞の切り抜きをしてるときに
拝見したことがある、まぶしそうな目の笑顔みたいな、若々しいお顔
の印象だけど(現在78歳とは!と調べて驚く)、1985年にこの本を 
訳してたようでした。初版が出た当時、45歳。やっぱ(台湾文学を 
精力的に翻訳してた友→)天野さん47歳でしぬのは早すぎ!と思うと
同時に、ただ、直接関わった人たち(著者や翻訳者や編集者など)が
年を取ろうとも、例えば亡くなろうとも良書は読み継がれるという事
は、(池内さんご存命だけど)46刷という数字を見ても実感できた。


画集・ビアズレー (1978年)

それから、挿絵がA・ビアズレーのようだな?と思いきや、調べると
ビアズレーの方が「影をなくした男」の挿絵画家よりも若い世代で、
私がビアズレー、すごい!個性的!と感じていた大胆な構図だとか、
墨一色の感じだとかも、私が知らないだけで「その時代」の空気感と
いうか、先達の流れを汲んで、そこにデカダンスな雰囲気が加わった
ような感じなのかな?と考える。「影をなくした男」の挿絵画家は、
ビアズレーほど日本において知られていないし、どっちが先だ、とか
どっちがいい画家だ、とかいう話ではなく、へー、なるほど、色んな
ものを見ないと、その絵の時代背景だとか当時の流行だとかを知ると
更に深く作品を感じ取れるのかもしれないなあ、と思いました。  




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